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2006年5月13日 (土)

手紙

mixi、それは自分の日記を書いたり友達が日記を見てコメントを書き込めたり出来る便利なソーシャルコミュニティサイト。自分の不満や起こった出来事を日記で書き、後で見てみると懐かしいものもあったりする。

久しぶりにこの町に来ている。人々でごったがえす駅の改札も今では微笑ましい。改札から右へ歩くと下の道路へと続く歩道橋が見える。今日は彼と大喧嘩した。それで気晴らしに散歩に来たのだ。私は歩道橋の上から下の道路を見つめた。昔はこの道路も小さな広場でそこにあった石のイスで休んだものだ。私の長い髪は風になびきアジエンスの香りがした。私自身ほおに風を感じながら道路を見つめていた。歩道橋の階段をゆっくりと下り、下の道を歩き出す。109を横目に大通りを前へと進む。ここの指輪は宝石が綺麗だからついつい長居してしまうのが私の悪い癖だ。だから今日は素通りした。歩くたびに見えてくる喫茶店はどこも二人語り合った思い出の場所だ。何気ない話をしているとあっという間に時間が過ぎていくのが私の日常だった。思わず胸が締め付けられる。不意にセピア色のフィルターが目にかかる。いけないいけない、店の前でたそがれながら立っていたら怪しい。心の淡い思い出巡りを止め名残惜しそうに店の前を去る。また右手に階段がありそれを登ると東急ハンズが見える。ハンズの入り口からまっすぐと進むと下に降りる階段。この階段の先にはバス停があって毎回彼に送ってもらう場所だ。そこでバスが来るまで一緒にいてくれた。たまには一人で帰りたかった日もあったけどそれは我慢していた。それも限界だった。そういうの気付くの不得意だからさ、相変わらず鈍感でまいるよ。バスに乗って乗車口が閉まりバスは発車。振り向くと彼が笑顔で手を振ってくれていた。そんな日々が当たり前だった。バスの外にいつもいた彼の姿はないんだ。そう思うと少し切なくなった。でもそれは逆も同じ。バスにいるはずのキミの姿ももうないのだから。最後に一度会っておきたかったけれど未練が残ってしまいそうだからよしておくよ。じゃあね。

彼の手紙はそこで終わっていた。私のmixiの過去の日記に自分の言葉を足した悪戯好きの彼らしい手紙だ。彼に何があったかは知らないが大喧嘩して以来連絡はもう来なかった。私は文を書くのが苦手だった。彼は自分の気持ちを伝えるのが苦手だった。お互いそこを思いやればもう少しうまくやれた、いや、もう遅いことだ。もしmixiで見かけることがあれば次は私があなたの日記の出来事を辿って手紙を書こうと思った。春風に乗って遠くに届くように。

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