« 手紙 | トップページ | 月と雲と風と »

2006年5月14日 (日)

白黒の国

島国の中心部に二人の男達が背中合わせで座っている。

二人が腰掛けているのは一つの大きな木の下。眠気を誘う太陽の光をあぐらをかきながら浴びている男とあえて木陰で足を組み座っている男。すでに二人の性格の違いが出てきている。陽だまりから男が同意を求めるように聞いた。

「なぁ、今度の旅行どう思うよ」

そう訪ねてはいるが俺としては初の海外旅行だ。海外に行けたことを想像するとそれだけで口の端が自然に上に上がってくるくらい楽しみだ。

「海外なんて行ったことないから無理さ」

僕にとって初めての海外旅行。なんだって初めてのものは失敗するもんなのさ。

「何言ってんだよ。海外旅行なんて大勢の人が行ってるじゃねぇか。海外だぜ海外。お前は行きたくないのかよ」

眉間にしわをよせながらも男は背中合わせのまま空へ怒鳴りつけた。

そりゃ俺だって初めての海外旅行だから不安だけどさ、そんなこと言ってたら何も始まらないじゃねぇか。

「大勢行ってるからって僕達がうまく海外に着けるとは限らないさ。何があるかわからないし」

男は虚ろな目をしながら遠くにある海を見つめながらつぶやいた。

僕だって楽しみではあるけど、余計な期待を持ったら裏切られるのがオチさ。今回もきっとそう。僕は何も期待しないよ。

「あ~、お前と話してるとイライラするんだよ。ぐちぐち暗いことばかり考えやがってよ。前向きに考えろよ」

男は立ち上がり後ろの男をにらみつけた。

「君みたいに僕は楽観主義者じゃないんさ。悪い方を覚悟してれば悪いことが起こったときにダメージが薄れるだろう」

男は嘲りながら前の男を見返した。

「海外に行けたらどれだけ幸せか想像してみろよ。」

男は痛いくらいに拳を握り、その手は震えていた。

「海外に行けなかったら国内に混乱が起こる。そんなリスクはおかせないさ。今はまだ我慢するべきなんだ。大人しく機を待て」

先ほどまで涼しげな顔をしてた男も眉を吊り上げて男を諭した。

両者は一歩も引かず話し続けた。積極的、猪突猛進的な考えの男と消極的、運命待ち的な男の話し合いだ。そう簡単に決着が着くはずもなく長い話し合いは星空が見えるまで続いた。

「よしわかった。なら海外の下調べがすんで俺達が行く先の国の奴が俺達の国に来たいと思ってそうなら行けってんだな」

腕組しながら男の中ではすでに海外に行く準備が出来ていた。いつでも海外に行ってやる。そんな気持ちがどこか高揚した顔に出ていた。

「そういうことだな。海外に行くことに関しては僕も異論はない」

脱力しながら暖かい笑みを浮かべながら男は星空を眺めていた。

どうやら話は積極的な男の主張が通ったようだ。二人とも気付いたときには隣り合わせで星を見ていた。

「なぁ、俺達の世界で俺らが話し合うことなんて言うか知ってるか?」

男は先ほどより穏やかな口調で問いかけた。

「『葛藤』でしょ。なら海外旅行に行くことはなんて言うか知ってるかい?」

男は先ほどより素直な態度で問い返した。

「そりゃ当然だ。『告白』だろ」

「成功させたいね、告白」

「こればっかりは神のみぞ知るってやつだからな」

二人の男の話し合いはこれからも終わりそうもない。

|

« 手紙 | トップページ | 月と雲と風と »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 手紙 | トップページ | 月と雲と風と »